中央銀行が発表する「利上げ」や「利下げ」で、FX市場が激しく変動するのはどうしてでしょうか? 本記事では、金利とFXの関係を解説しながら、金利予想に基づいたトレード戦略の立て方を解説します。
FXと金利の関係
FXと金利は、強い相関関係にあります。通貨の価格は様々な要因に左右されますが、とりわけ金利がFXに与える影響は大きく、最も考慮すべき要素だといっても過言ではありません。
一般的に、お金の流れは金利の高い通貨に向かう傾向にあります。それは、金利が高い定期預金に預金が集まるのと同じ仕組みです。
金利には実質金利と名目金利があり、インフレ率を差し引いたものが実質金利です。実質金利は10年もの国債の金利・利回りが目安とされ、通貨の価格は10年債金利と連動することが多くなります。
![2024-02-23 20_42_52-Window](https://a.c-dn.net/b/38MfEK/image1.png)
FXトレーダーは、各国の中央銀行の金利を注視しておく必要があります。米国のFOMCでの政策金利の発表は、FXだけでなく世界経済を大きく揺るがす要因となるため必須です。世界中の金融関係者が息をのんで発表を待ち構えるほど、その影響力は強大だといえます。
さらに利上げや利下げの見通しから、通貨の相場動向を予想していくことが重要です。本記事では、外国為替と金利を対象に以下の点を深く掘り下げていきます。
- 金利とは何か?金利は通貨にどのような影響を与えるのか?
- 中央銀行の政策金利と各通貨の金利差について
- 政策金利はいつ発表されるのか?市場の金利予想を調べる方法は?
- 政策金利や経済指標を取り入れたFX戦略
金利とは何か? なぜFXトレーダーにとって重要なのか?
FXでよく聞く「金利」とは、通常は中央銀行の政策金利のことを指します。金利はFXトレーダーにとって最も重要なもの。金利の見通しに応じて、通貨の価格は大きく上下する傾向にあるからです。
中央銀行は、経済を安定させるために、様々な金融政策を行っています。なかでも最も重要な政策は、金利を操作すること。先にも述べたように、金利が変わると通貨の価値が変わるため、物価や景気にも影響を与えるとされています。
中央銀行が金利操作に用いる政策は主に以下の3つがあります。
1.政策金利の決定
政策金利とは、中央銀行が定める国の基準となる金利のこと。この金利をもとに、金融機関の預金や融資の金利などが決定されるため、個人消費や経済に大きな影響を及ぼします。
2.公開市場操作
公開市場操作とは、金利に影響を与えることを目的として、市場で有価証券や国債を売買することをいいます。例えば、国債を大量に購入すると債券の価格が上がり、金利を下げる効果があります。
金利と債券の関係
![2024-02-23 08_09_37-債券とは?その仕組みやリスクを解説|IG証券](https://a.c-dn.net/b/1P7qs2/image2.png)
出所:IG証券
3.公定歩合・貸付利率の操作
公定歩合操作とは、中央銀行が商業銀行や都市銀行に貸し付ける際の金利を操作することをいいます。米国ではFF金利とも呼ばれていて、中央銀行の政策金利に基づくものです。金利が低くなると金融機関の借入が増え、金利が高くなると金融機関の借入が減少する仕組みです。
中央銀行の主な役割は、インフレ率の管理と自国の為替レートの安定化の2つ。有価証券や債券の売買、金利の変更、他にも通貨発行量を調整するにより、自国経済・自国通貨の安定が図られているのです。
金利と景気の関係
景気を安定させるために、「利下げ」や「利上げ」を中央銀行が決定するわけですが、景気と金利はどのように関わっているのでしょうか
経済は、ほとんどの場合、成長しているか縮小しているかのどちらか一方に動いています。経済が成長しているということは好景気を表し、経済が縮小しているということは景気低迷を意味しています。
好景気は国にとって良いことですが、行き過ぎるとインフレが進み物価が高騰してしまい経済に打撃を与えます。景気低迷は消費を後退させ国の経済力を低下させる現象です。
中央銀行は、常に金利を調整することで、行き過ぎの好景気にストップをかけたり、景気低迷時に消費を促したりして、経済の安定化を目指しているのです。
好景気(GDP成長率がプラス)では、消費者はより多くの収入を得るようになります。収入が増えれば購買力が強まり、消費が増えます。消費に対し、商品の供給が少なくなることで、インフレ(物価上昇)を引き起こします。供給量よりも需要の方が大きい状態のことです。
適度な物価上昇は経済成長を保つためには必要で、2.0%程度の上昇率がとされています。好景気によって、インフレが加速するのを避けるために、金利を上げて消費を抑えようとします。近年の欧米のように、「利上げによるインフレ率の低下を図る」わけです。
経済が縮小している(GDP成長率がマイナス)場合は、デフレ(物価の下落)から経済の悪循環が引き起ります。収入が減少するため商品が売れなくなり、さらに値下げが進む状況。中央銀行は金利を引き下げて、消費や投資の促進をます。企業は低金利の融資投資を積極的に行い、雇用機会の創出にもつながります。経済が活性化し始めると、またインフレ率が上昇するサイクルです。
利上げと景気のサイクル
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金利がドル円など通貨に与える影響とは?
ここまで、金利と景気の関係や、中央銀行が金利を操作する仕組みました。では、なぜ「利上げ」や「利下げ」がFXに大きな影響を与えるのでしょうか
金利が変化することで、通貨に対する需要が変化する―これが、金利が外国為替市場に影響を与える仕組みです。下の表は、金利の見通しが変化した場合に起こりうるシナリオを示しています。
市場の見通し | 実際の結果 | 為替レートへの影響 |
---|---|---|
利上げ | 金利据え置き | 通貨の下落 |
利下げ | 金利据え置き | 通貨の上昇 |
金利据え置き | 利上げ | 通貨の上昇 |
金利据え置き | 利下げ | 通貨の下落 |
FX取引と金利との関係性
仮に、一定額以上の余剰資金があるとして、国債など低リスクの資産に投資するとします。当然ながら、金利が高い方を選ぶ人いでしょう。例えば、米国の金利上昇が期待できるような局面であれば、米ドルで米国債の投資を始めた方が、日本国債を買うよりも利息で利益が得られるわけです。
そういった仕組みから、2022年以降、米国の利上げから円安がこれまでになく加速しているのは、金利差によるところが大きいと言えます。
多くの投資家が金利が期待できる通貨を求めることで、米ドルの需要が高まり、米ドルの上昇へとつながります。これが、金利と通貨の本質的な相関性です。FXトレーダーは、各国の政策金利の動向をしっかりと抑えておく必要があるのです。
FXと金利の関係を理解する
金利が高い方に資金が流入するのがFXの大きな特徴。2ヵ国間の金利差が拡大することで、売買加速ます。
例えば、米国が予想外の利上げを行うと予測するならば、米ドルが上昇する可能性が高くなると判断するでしょう。金利差が大きくなるほど、価格の変動率も激しくなる傾向にあり、大きな値動きが期待できます。ドル円の場合であれば、低金利の円売って、米ドルを買うことで成功率を高めることができます。
金利と金利差は通貨ペアの上昇・下落に大きな影響を与え金利差の変化は通貨ペアの上昇・下落に相関します。例えば、2023年12月14日のFOMCの結果から米ドルの金利引き下げが予測された時には、短時間であっという間にドルが急落しました。
米ドル/円 1時間足チャート(2023年12月14日)
![2024-02-24 02_50_52-Window](https://a.c-dn.net/b/1szOOg/image4.png)
下のチャートは米ドル/円と、米国10年国債及び2年国債の利回りを比較したもの。国債の利回りが上昇すると、通貨も上昇するという関係がられます。
![2024-02-24 03_02_36-Window](https://a.c-dn.net/b/3bJUFw/image5.png)
金利差は、ヘッジファンドなどの大手金融機関のキャリートレードでも広く使われています。キャリートレードとは、低金利の通貨を売って、高金利の通貨を買い金利差で稼ぐ方法。スワップポイントで稼ぐ個人トレーダーもいます。ただし、金利のみを考慮し過ぎると、思いがけない為替差益で損失を出すリスクもあるので注意が必要です。
FOMCや日銀の金利予想や価格動向を調べる方法
中央銀行の金利がFXに強い影響を与えることはわかっていても、予測することは容易ではありません。そこで、参考にしたいのが大手投資機関やメディアが発表する金利予想や、相場分析レポート。市場では「どう予測しているのか」「通貨の動きをどう見ているのか」「何に注目しているのか」を知ることができます。
最初にチェックしておきたいのが、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で取引されているFF(フェデラルファンド)金利先物情報。FF金利は米政策金利の予想に応じて取引されているため、このレートから概ねの金利予想が分かると言われています。FF金利に基づく予想統計結果は、「FedWatchツール」無料でアクセスしてチェックできます。
CMEのFedWatchツール
![2024-02-24 03_42_26-Window](https://a.c-dn.net/b/1DkSZ5/image6.png)
出所:CME
市場予想を知ることで、実際に発表される前後にどう動くべきか戦略を立てることができます。
また、FRB・FOMCだけでなく日銀やECBなど、主要国の政策金利をチェックすることも大切です。FXに大きな影響を与える中央銀行の政策を知ることで、より勝率の高いトレードが実現するでしょう。
国 | 中央銀行の名称 |
---|---|
米国の中央銀行 | 米連邦準備制度理事会(FRB) |
日本の中央銀行 | 日本銀行(日本銀行) |
EUの中央銀行 | 欧州中央銀行(ECB) |
英国の中央銀行 | イングランド銀行(BOE) |
中国の中央銀行 | 中国人民銀行(PBOC) |
日本の中央銀行の政策金利は、日銀金融政策決定会合にて発表されます。日銀の方針を知る方法として、日銀短観を参考にする方法もあります。
世界の中央銀行の政策発表スケジュールは、こちらからご確認いただけます:世界の中央銀行カレンダー
政策金利などの経済指標を基盤にした取引方法は、チャートを使ったテクニカル分析とは異なり、ファンダメンタルズ分析手法と呼ばれています。ファンダメンタルズ分析に関する詳細は、以下のコンテンツをご覧ください:
【参考】FXのファンダメンタルズ分析、マクロ経済ファンダメンタルズ
政策金利発表を利用したFXの戦略
中央銀行は、いくつかの重要な経済指標に基づいて、金利の引き上げや引き下げを判断します。主要なデータとしては、CPI(インフレ率)、雇用統計・失業率、PPI・ISMなどが挙げられます。これらの発表スケジュールは、経済指標カレンダーでいつでも見ることが可能です。
トレーダーは、市場の金利予想を深くリサーチするとともに、中央銀行の方針を理解し、どう行動すべきか戦略を練ることで利益へとつながります。
例えば、政策金利発表前にCPIの発表を控えているとしましょう。その場合、利上げ予想に応じていくつかのシナリオが想定できます。
米ドル/円 1時間足チャート(2024年2月14日)
![2024-02-24 06_33_19-Window](https://a.c-dn.net/b/2TV4G2/image7.png)
- 「市場は利上げを予想」→「CPIが上昇」→「利上げ観測が強まる」→「為替レートが上昇」→「買い」
- 「市場は利下げを予想」→「CPIが下降」→「利下げ観測が強まる」→「為替レートが下降」→「売り」
というように、利上げ予想が優勢な中、金利発表前のCPIが上昇なら「買い」に向かえるというのが1つの考え方です。
このように、トレーダーは政策金利をめぐる経済指標の動きからトレード機会を得ることができるのです。金利発表を控えたFX市場は、乱高下しがちです。リスクは高まりますが、絶好のトレード機会として捉えることもできます。価格が底をついて上に反転するタイミングを狙ったり、上昇しきった後の一時的な下降の波に売りから入ったりするなど、多くの可能性を見出すことができるでしょう。
【参考】FOMC議事要旨を徹底解説! 議事要旨を活用したドルの通貨ペアと金価格のトレード戦略とは?
FXと金利の関係のまとめ
- 政策金利の発表そのものよりも、発表前の金利予想の時期の方が相場は変動しやすい傾向にあります。「噂で買って事実で売る」現象が度々起きてしまいます。
- 金利差が大きい通貨ペアを取引することで、トレードの成功率が高まる可能性があります。ドル円などが代表的な例です。
- 市場の見通しの変化を予想するためには経済指標カレンダーを活用して、経済指標を常に把握しておくことが重要です。
- 市場の政策金利予想や、相場の見通し・分析レポートなどから、どのような展開が予想できるのかリサーチが必要です。
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