※2024年5月27日更新
FXのボラティリティはさまざまな要因の影響を受けやすいため、多くのトレーダーはボラティリティの高い通貨を取引する際にそれ専用の戦略を計画しなければなりません。
通貨ペアのボラティリティ水準が高いほどリスクは高くなり、その反対にボラティリティが低いほどリスクは低くなります。このように、ボラティリティとリスクは通常、同義語のように使用されます。
本記事では、FXのボラティリティが高い通貨ペアの特徴や、測定する方法、注意点について説明します。
FXのボラティリティが高い通貨ペアとは
ここでは、ボラティリティとは何かを解説します。
そもそもボラティリティとは?
ボラティリティとは、金融資産の価格変動率を示す指標であり、相場の動きの大きさを数値で表現したものです。FXやCFD取引においてボラティリティが高いという状態は、価格変動が激しく、大きな価格の上下動が見受けられるときを表します。反対にボラティリティが低いときは、相場の動きが穏やかで、価格変動が小さい状態を表します。
ボラティリティは、市場の動きを把握し、投資戦略を立てるうえで重要な要素の1つです。価格変動の大きさを理解し、それに合わせて取引することで、効果的に投資できるでしょう。
FXのボラティリティが高い通貨ペアの特徴と例
ボラティリティの高い通貨ペアは通常、一定期間において、pipsの動きがボラティリティの低い通貨ペアよりも多くなります。これにより、ボラティリティが高い通貨ペアの取引リスクは増加します。また、ボラティリティの高い通貨ペアは、ボラティリティの低い通貨ペアよりもスリッページが発生する傾向があります。
ボラティリティの高い通貨ペアはより大きな動きをするため、適切なポジションサイズを判断しなければなりません。
主要通貨の中でボラティリティが高い通貨ペアの例として、以下が挙げられます。
![グラフ, 棒グラフ 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/3pmk3Z/image1.png)
一般的に、ユーロ/ドル、ドル/円、ポンド/ドル、ドル/スイスフランなどの主要通貨ペアは流動性がより高く、その結果ボラティリティは低くなっています。しかし、ドル/南アフリカランド、ドル/トルコリラ、ドル/メキシコペソなどの新興市場の通貨ペアは高いボラティリティを記録しています。
FXのボラティリティが高い通貨ペアの魅力
ボラティリティが高い通貨ペアは価格の変動が激しいという特徴があるため、短期間でも利益を生み出すチャンスがあります。しかし、その分損失リスクも高くなるため、リスク管理には十分注意が必要です。
ボラティリティを考慮するうえで、一定の時間帯における通貨ペアの価格変動を見てみましょう。ボラティリティが高ければ、価格は大きく上下します。この動きをうまく予測し、適切なタイミングで売買することで、大きなリターンを見込めます。
例えば、ある通貨ペアの1時間あたりの平均価格変動が50pipsだとしましょう。この場合、適切なエントリーポイントとエグジットポイントを見つけることで、50pipsの利益を得る可能性があります。しかし、不適切なタイミングで売買した場合、50pipsの損失を被る可能性もあります。
このように、ボラティリティが高い通貨ペアは、大きなリターンを狙うための資産として魅力的ですが、その反面、損をするリスクも大きいため、リスク管理と適切な投資戦略が欠かせません。
【関連記事】FXの基礎知識や戦略について、さらに詳しくは「FX取引の基礎知識とは?市場環境の種類や戦略の立て方を解説」をご覧ください。
FXのボラティリティが低い通貨ペアとは
主要通貨ペアはボラティリティが低いことが多く、流動性が比較的に高いです。また、ボラティリティが低い通貨ペアの国は、経済規模が大きく、より発展している国の通貨であることも特徴です。そのため、取引高が増加しやすく、価格の安定性が高まります。例えば、ユーロ/ドル、ドル/スイスフラン、ユーロ/ポンドは取引高が多く流動性も高いため、ボラティリティの低い通貨ペアと言えます。
FXのボラティリティは利確や損切りの目安として利用できる
FXの取引を成功させるためには、利確と損切りの判断が大切です。利確とは、得た利益を確定させるために、通貨ペアを売買し損益を確定させる行為のことです。一方、損切りとは、損失が出ている状態で通貨ペアを売買し、損失を確定させる行為を指しますが、ボラティリティは、利確や損切りのポイントを見極める目安となり得ます。
例えば、過去数日間のボラティリティの平均値を調査し、その平均値が一定であれば、今日も同等程度の値動きになる可能性が高いと予想できます。
値動きの幅が予測できた場合、どの程度の価格変動で利確や損切りをすべきかを判断しやすくなるでしょう。これにより、FX取引におけるリスクの管理と、効率的な取引戦略の立案が可能となります。
ここで、過去数日間のボラティリティの平均値から目安となる利確・損切りのポイントを紹介します。
過去のボラティリティ平均値 | 利確の目安 | 損切りの目安 |
---|---|---|
0.5% | 1.0% | -0.5% |
1.0% | 2.0% | -1.0% |
1.5% | 3.0% | -1.5% |
FXのボラティリティとリスクの関係性
ボラティリティが高ければ高いほど価格変動が大きく、低ければ価格変動が小さくなります。ボラティリティが高いということは、リスクが高いと理解しなければなりません。なぜなら、価格変動が大きいということは、期待する利益だけでなく損失の可能性も高まるからです。そのため、ボラティリティが高い通貨ペアを取引する際は、潜在的なリスクも十分に考慮することが重要です。
【関連記事】FXのボラティリティとリスクの関係性を理解したあとは、金利との関係性も押さえましょう。詳しくは、「FXと金利の関係とは|FOMCや日銀など政策金利におけるFX戦略」をご覧ください。
FXのボラティリティを測定する方法
FXの通貨ペアにおけるボラティリティは、通貨の値動きの標準偏差または分散を計算することにより測定されます。一定期間における平均と比べて、通貨がどれほど変動するかの目安となります。ここでは、FXのボラティリティを測定する方法を紹介します。
ボラティリティ表の活用
FX会社などが提供しているボラティリティ表を活用すれば、各通貨ペアの価格の変動幅を一目で把握できます。ただし、ボラティリティ表を効果的に使うためには、その表示方法を理解しなければなりません。
ボラティリティ表の数値は、主に「合算」か「平均」の2通りの方法で表示されます。合算は、特定の期間内における価格変動の合計を示し、平均はその変動を平均化したものを示します。また、数値だけでなく時間の表示方法も重要です。例えば、日次ボラティリティと時間帯別ボラティリティでは、価格変動の見え方が大きく異なる可能性があります。
アベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)
アベレージ・トゥルー・レンジ(ATR)とは、通貨ペアのボラティリティを測定する方法のことです。
以下のチャートに示すように、ドル/スイスフランのATRは45pipsから65pipsの範囲となっており、他の通貨ペアより低くなっています。
![グラフィカル ユーザー インターフェイス, グラフ 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/3meVHJ/image2.png)
2つの通貨間の相関もそのボラティリティに影響を与え、そこに正の相関があれば、ボラティリティは低くなる可能性があります。
例えば、米ドルとスイスフランは両通貨とも安全資産とみなされています。市場でリスク回避の動きが取られる時期には、センチメントに影響される他の通貨に対して上昇する傾向がありますが、この2つの通貨の間ではそれほどの乖離はありません。
ドンチャンチャネル
ドンチャンチャネルとは、ある一定期間(例:20日)の高値と安値を基に、ボラティリティを計測するインジケーターのことです。計算方法は、アッパーバンド=20日間の最高値、ロワーバンド=20日間の最低値、ミドルライン=(アッパーバンド+ロワーバンド)÷2で算出します。
![image3.png](https://a.c-dn.net/b/0CefBX/image3.png)
ボラティリティが高いとき、つまり市場の変動が大きいときにはバンドが広がり、逆にボラティリティが低いとき、つまり市場の変動が小さいときにはバンドが狭くなります。これにより、一目で市場の動きを捉えることが可能です。
また、価格がアッパーバンドあるいはロワーバンドに触れたり突破したりすると、市場が過熱状態(買われ過ぎ・売られ過ぎ)にあることを示します。過去のトレンドが確認されている場合、価格は一旦反転して再度同じ方向へ動く傾向があります。
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドとは、移動平均線を中心に一定の標準偏差範囲を示したものです。価格が上昇または下降し続けるとバンドが広がり、その反対に価格が安定するとバンドが収縮します。
![image4.png](https://a.c-dn.net/b/2Vc6RZ/image4.png)
ボリンジャーバンドは、中心線を基準に上下それぞれ2σ(標準偏差)の幅でバンド(上部・下部バンド)を引きます。このバンドの幅が大きい(バンドが広がっている)場合、その通貨ペアのボラティリティは高いと言えます。逆に、バンドの幅が小さい(バンドが収縮している)場合は、ボラティリティが低いと判断します。
ボリンジャーバンドを使うと、ボラティリティが高い通貨ペアを探す際に視覚的なヒントを得られるため、取引戦略を立てる際の参考になります。
ヒストリカル・ボラティリティ(HV)
![image5.png](https://a.c-dn.net/b/3dAynD/image5.png)
ヒストリカル・ボラティリティ(HV)とは、過去のデータに基づいて計算されるインジケーターのことです。過去一定期間(例:20日間や1年間など)の値動きから算出されます。具体的な計算方法としては、一定期間の高値と安値の差を基にその平均値を算出します。この値が大きければ大きいほど、その通貨ペアのボラティリティは高いと言えます。
インプライド・ボラティリティ
![image6.png](https://a.c-dn.net/b/2WsOJ7/image6.png)
インプライド・ボラティリティとは、将来の価格変動率を予測したもので、ヒストリカル・ボラティリティ(過去の価格変動率)を基に決定します。また、以下の要素を考慮します。
- 今後の相場動向予想:トレーダー各自の見解やアナリストによる市場予測に基づくもの。将来的な市場の動きを予想して、価格変動率の予測値を設定します
- 需給関係:市場の供給量と需要量のバランスは、価格の上下を大きく左右します。これらの要素から、適切な価格変動率を推測します
さらに、重要な経済指標の発表や政情不安など、マクロ経済に関連する情報もインプライド・ボラティリティの決定に影響を与えます。リスクが高い状況とされるときは、インプライド・ボラティリティは上昇し、逆にリスクが低いと評価される状況では下落します。
したがって、インプライド・ボラティリティをチェックすることで、FX取引におけるリスク評価や将来の価格変動の予測が可能です。ボラティリティが高い通貨ペアの取引において、これは重要なポイントです。
【関連記事】FXのテクニカル指標については、「テクニカル分析入門|テクニカル分析の基礎知識をプロが解説!」でさらに詳しく知ることができます。
FXのボラティリティが高い通貨ペアの注意点と取引戦略
次に、ボラティリティが高い通貨ペアの注意点と取引戦略を紹介します。
低いレバレッジを設定する
ボラティリティが高い通貨ペアを取引する場合、その値動きは大きく、投資家にとっては大きなリターンが得られるチャンスですが、同時にリスクを伴います。リスクを軽減するためには、レバレッジを低く設定することが有効です。
レバレッジが低いと、投資金額に対する取引額が少なくなります。したがって、価格変動による影響も小さくなり、大損するリスクが減少します。しかし、ボラティリティが高い通貨ペアは価格変動が大きいため、一時的な大きな価格下落によりロスカット(強制決済)される可能性があります。そのため、ボラティリティが高い通貨ペアを取引する際には十分な資金を確保し、ロスカットラインを適切に設定することも欠かせません。
マイナー通貨(新興国通貨)に注意
マイナー通貨は、比較的低い流動性とは別に、その通貨を支える新興国に内在するリスクのためにボラティリティが高くなる傾向があります。以下のチャートは、マイナー通貨のボラティリティの高さを示しています。
![グラフ, ヒストグラム 自動的に生成された説明](https://a.c-dn.net/b/3tTeJ3/image7.png)
ドル/南アフリカランド(USD/ZAR)は、1ヶ月ほどの間に約25%という爆発的な上昇を示しました。このように、大幅に変動する新興国の通貨には気をつけなければなりません。
FXのボラティリティや影響を与える要因を理解する
FXのトレーダーは取引する際に、ボラティリティの現在の値と、潜在的変化を考慮する必要があります。通貨ペアのボラティリティに応じて、そのポジションサイズの調整を検討してください。ボラティリティの高い通貨ペアの取引においては、ポジションサイズを縮小すべきでしょう。
ボラティリティに注意を払うことにより、トレーダーは適切な水準のストップロスとテイクプロフィットの指値注文を設定できます。さらに、ボラティリティの高い通貨ペアと、ボラティリティの低い通貨ペアを分ける特徴を理解することも重要です。また、トレーダーはボラティリティの測定方法と、ボラティリティに変化をもたらす可能性のあるイベントを考慮しなければなりません。
時間帯によってボラティリティは変動しやすい
FX取引におけるボラティリティは、ロンドン市場とニューヨーク市場が開いている時間と関連しています。これらの市場は、日本時間でロンドン市場が17時から翌3時(夏時間は16時から翌2時)、ニューヨーク市場が22時から翌7時(夏時間は21時から翌6時)となります。これらの時間帯は活発に取引されており、結果的に通貨ペアの価格変動が大きくなりやすい傾向があります。
特に注意すべきは、ロンドン市場とニューヨーク市場が同時に開いている22時から翌3時(夏時間は21時から翌2時)の時間帯で、ボラティリティが一段と高くなる可能性があります。
また、各国政府が経済指標を発表する際もボラティリティは高まる可能性があります。これらの要素を取引戦略に組み込むことで、より効率的な取引が可能となるでしょう。
適切な取引スタイルを選択する
FX取引では、デイトレードとスイングトレードなどの戦略を選ばなければなりません。ただし、これらの戦略はボラティリティと関係しています。
デイトレードは、1日の間に複数回の取引を行い、取引終了時にはすべてのポジションを清算する取引スタイルです。ボラティリティが高い通貨ペアを取引すると、価格の大きな変動を利用して高い利益を得るチャンスがあります。しかし、同時にリスクを伴うため、リアルタイムでの市場分析や素早い意思決定が求められます。
一方、スイングトレードは、数日から数週間など中期的なスパンで取引を行うスタイルです。ボラティリティが高い通貨ペアの場合、価格変動の波に乗ることで大きな利益を狙えますが、長期間の保有には高いリスク性があるため、慎重なリスク管理が必要です。
それぞれの戦略におけるメリットとデメリットを考慮に入れ、自分の取引スキルやリスク許容度に合わせて最適な取引戦略を選択しましょう。
【関連記事】リスク管理については、「FXトレードにおける適切なリスク管理の基礎をプロが解説」でさらに詳しく知ることができます。
まとめ
FXのボラティリティが高い通貨ペアは、豪ドル/円やニュージーランドドル/円、豪ドル/米ドルなどが挙げられます。ボラティリティが高いとその分リスクも高くなりますが、特徴をうまく理解すれば利益を狙えるはずです。
ただし、ブレグジットや貿易戦争などのニュースは通貨のボラティリティに大きな影響を与えます。そのため、経済指標カレンダーを使用して、最新のデータを確認することが大切です。
また、ボラティリティの高い通貨ペアは、サポートラインとレジスタンスライン、トレンドライン、プライスパターンなど多くのテクニカル要素を参考にできます。トレーダーは厳格なリスク管理と組み合わせてテクニカル分析を行うことにより、ボラティリティをうまく活用できるでしょう。
通貨ペアに関する最新のニュースや分析、レートをチェックすることは、ボラティリティの変化を予測するために大切です。DailyFXでは、総合的な取引予想を提供しているのでぜひご覧ください。
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