主要経済国がよりクリーンなエネルギー源にシフトする中、世界の石炭消費量は2026年まで減少すると予測されている。しかし、世界の石炭消費量は依然として高く、石炭銘柄企業は高インフレ下でも高収益を維持しており、株価先高感が高まっている。
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石炭は依然として世界最大のエネルギー源
一部の投資家にとって石炭は汚い言葉だが、現実には石炭は依然として発電、製鉄、セメント生産に使用されており、世界最大のエネルギー源である。
約200カ国の代表が気候変動対策を議論する国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は、化石燃料の「終わりの始まり」を宣言したにもかかわらず、石炭火力発電の段階的停止を加速するよう求めたにとどまり、石炭火力発電所の廃止を義務づけるまでには至らなかった。
とはいえ、中国、インド、その他のASEAN(東南アジア諸国連合)諸国の石炭需要は引き続き増加しているにもかかわらず、国際エネルギー機関(IEA)は、中国の石炭消費量は2024年に減少し、その後2026年まで横ばいになると予測している。石炭全体の消費量はこの10年でピークに達するとみられている。IEAが石炭消費量の減少を予測したのはこれが初めて。各国政府がより強力なクリーン・エネルギー政策や気候変動政策を実施していない中での減少予測となる。
石炭消費量の推移 (2021―2025年)
資料:IEA、世界銀行
オーストラリア政府によると、2024年4-6月期には天候による供給制約が緩和され、冶金用石炭市場は安定した。2024年の海上輸送による冶金用石炭の輸入需要は堅調に推移し、2025年はインドの鉄鋼需要増が中国の不動産セクターの低迷を相殺し、微増すると予測している。
にもかかわらず、オーストラリアの一般炭と冶金炭を合わせた輸出収益は2023/24年の900億ドルから2025/26年には700億ドルに減少する見通しだ。
様々な金属と石炭の価格予測 (2024―2025年)
資料:オーストラリア政府
石炭価格の今後の動きとは?
石炭価格はここ数年乱高下している。2021年後半に新型コロナウイルス感染症規制が解除され、供給が需要増に追いつかなくなったため、一般炭価格が急騰した。その後、2022年にロシアがウクライナに侵攻し、供給の制約とエネルギー安全確保への懸念から石炭価格は史上最高値まで上昇した。
価格は2023年に下落し、2024年には供給量の増加に加え、エネルギー源として石炭を敬遠する傾向が強まり、下落し続けている。オーストラリア政府は、石炭価格が2024年の264米ドルから2026年に208米ドルまで下がると予想している。
オーストラリアと南アフリカの石炭価格の推移
資料:世界銀行
豪クイーンズランド州の石炭危機
最近、オーストラリア・クイーンズランド州で2つの予期せぬ事件が発生し、石炭の供給と価格に短期的な影響を与えている。
まず、主要な冶金用石炭の輸送鉄道が衝突事故でストップした。モルガン・スタンレーは、この事故によりクイーンズランド州の週間出荷量が約24%減少する可能性があり、これは世界の海上輸出量の推定12%に相当すると述べた。アナリストたちは、インドの選挙と季節的な供給増を考慮すると、この事故は短期的には需給の引き締めにつながると予想している。
第2に、クイーンズランド州にある英鉱業大手アングロ・アメリカンのグロスベナー製鉄炭鉱で地下火災が起こり、生産停止を余儀なくされた。人的被害はなかったが、被害状況の調査や鉱山の再開には数カ月かかる可能性がある。また、JPモルガンによれば、アングロ社の石炭資産売却計画にも支障が出る可能性があるという。
老舗炭鉱各社は増益へ
世界の石炭生産者は、石炭価格が2022年にピークを迎えるまで上昇し、インフレに伴ってコストが上昇する中でも、高い収益を享受してきた。鉱業各社はこの期間に、現金をある程度保持しつつ、負債を返済し、配当と自社株買いを増やした。
セネカ・フィナンシャル・ソリューションズのルーク・ラレティブ氏によれば、炭鉱への新規投資が少ないことも、既存の炭鉱会社にとっては追い風になるという。
ラレティブ氏は、「石炭セクターには、私たちが本当に気に入っている優良な銘柄がたくさんある」と指摘。ニューホープ・コーポレーション(NHC)やスタンモア・リソーシズ(SMR)などの銘柄企業は、セクター全体としてもみ合い局面にあることから恩恵を受けており、押し目買いの好機とみている。
ニューホープ株価 日足チャート
資料:IG
スタンモア・コール株価 日足チャート
資料:IG
エネルギー需要の高まりから恩恵を受けるホワイト・ヘイブン・コール
マーケット・マターズのショーン・ヒックマン氏は最近、豪ストリーミングサービス会社ausbizに「AI(人工知能)がもたらすエネルギー需要の増加は、ホワイト・ヘイブン・コール(WHC)のような銘柄を支えるだろう」と語った。
ホワイト・ヘイブン・コール株価 日足チャート
資料:IG
ホワイト・ヘイブン・コールに強気スタンス:モルガン・スタンレー
モルガン・スタンレーのアナリストは、インドの需要と供給のひっ迫が第3四半期に冶金用石炭を牽引し、第4四半期には需給が引き締まると予想し、「ベース」メタルよりも「バルク」メタル(金属)により投資妙味があるとみている。
ホワイト・ヘイブン・コールを「オーバーウェイト」(投資対象への配分比率を基準となる資産の配分比率よりも高くすること)としている。同株の12カ月先EV/EBITDA倍率は3.8倍と、世界の冶金用石炭の同業他社に比べて割安に見えるという。今年中にブラックウォーター炭鉱を売却する可能性があり、それによってキャッシュフローが増加し、デレバレッジが大幅に進む可能性があるとみている。目標株価は9.75ドル。
WHC株に「買い」の投資判断
資料:Refinitiv
コロラド・グローバル・リソーシズが「買い」
オーストラリアに拠点を置くグローバル金融グループマッコーリーは冶金用石炭を「オーバーウェイト」とみているが、一般炭は「アンダーウェイト」としている。ただマッコーリーは、特に一般炭の短期・中期予測を引き上げた。マッコーリーのアナリストによると、石炭全般の見通しがよりポジティブにシフトしているという。
コロナド・グローバル・リソーシズ(CRN)はマッコーリーが選んだ炭鉱会社。CRNは冶金用炭価格が引き続き堅調であるにもかかわらず、セクター内で最もパフォーマンスが振るわず、同業他社に比べて相対的にバリュエーション面で優位性があると指摘している。モンゴルの輸出は順調に回復しているものの、オーストラリアの出荷の回復ペースが遅く、需給が引き締まると予想されるためだ。目標株価は2.00ドルで、投資判断は「アウトパフォーム」と評価している。
コロナド・グローバル・リソーシズ株価 日足チャート
資料:IG
ホワイト・ヘイブン・コールの目標株価は9ドル
マッコーリーはホワイト・ヘイブン・コールも「アウトパフォーム」に位置付け、目標株価を9.00ドルとした。ニューホープは「中立」に格上げ、目標株価を4.00ドルとした。
NHC株の投資判断
資料:Refinitiv
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