10月は米ドル高が多くの通貨に対して進展するも、南アフリカランドやポーランドズロチは上昇した一方、メキシコペソやトルコリラは下落し、新興国通貨によってまちまちであった。中東情勢、景気・金融政策動向など多くの波乱要因がある中、ZAR、PLN、TRY、MXNの対円での11月の見通しとは
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推薦者: 木全哲也
サマリー
- 10月の新興国通貨市場振り返り
- 米ドル高進行も、新興国はまちまちの動き
- 南アフリカランド、ポーランドズロチ、トルコリラ、メキシコペソの対円での11月の見通し
10月の新興国通貨市場振り返り
イスラエルとハマスの衝突により中東情勢が緊迫化する中、投資家のリスクセンチメントが悪化した。米国では、マッカーシー前下院議長が共和党強硬派によって解任され、政治的不透明感が高まった。
このような中、為替市場は一部の通貨を除き米ドル高が進行した。新興国通貨では、メキシコペソやトルコリラは米ドルに対して下落した一方、南アフリカランドやポーランドズロチは米ドルに対して上昇した。
南アフリカランド(ZAR)は、南ア中銀が政策金利を高めに維持する方針であるに加え、主要産品である金価格が底堅く推移していること、また経済の重荷となっていた電力不足に対する懸念が後退していることなどを背景に多くの通貨に対して上昇した。
ポーランドズロチ(PLN)は、総選挙が実施され、野党連合が政権奪取する見込みが高まったことを受け、上昇した。現在の与党は欧州連合(EU)と対立しており、長らくポーランドズロチの重荷となっていた。野党の党首は、EU大統領も務めたことのある親EU派であり、野党連合が政権奪取した際には、EUとの関係改善が見込まれる。
トルコリラ(TRY)は、トルコ中銀が、利上げを実施したものの、依然としてインフレ率と比べて低い政策金利の水準にとどまっていることなどが嫌気され、多くの通貨に対して下落した。
メキシコペソ(MXN)は、年初来堅調に推移していたこと、メキシコ中銀によるペソ安抑制策が縮小されたこと、更にメキシコ政府のビジネスへの介入、主要産品である原油価格が下落したことなどを受けて、メキシコペソは下落した。
![A graph with different colored bars Description automatically generated](https://a.c-dn.net/b/3Sx0hY/image1.png)
資料:Trading EconomicsよりDaily FXが作成。
米ドル高が多くの通貨に対して進展するも、新興国通貨の中で強弱が見られたが、今後のメキシコペソ、トルコリラ、南アフリカランド、ポーランドズロチの対円での見通しとは。詳しく見てみたい。
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推薦者: 木全哲也
メキシコペソ円(MXNJPY)の見通し
メキシコペソ円は、週足チャートで、7月10日の週の安値8.141円でサポートされている。また、9、20,50,200期間移動平均線が上向き、かつ上から順に並ぶメキシコペソに強気の「パーフェクトオーダー」が維持されている。一方、RSIやMACDにてメキシコペソに弱気の「弱気の乖離(ダイバージェンス)」が示現している。テクニカル面では中立である中、メキシコペソ円は上下双方に動く展開を想定したい。
メキシコペソ円が上昇した局面では、8月28日の週の高値8.777円を上方ブレイクできるかに注目。ブレイクに失敗した場合、メキシコペソ円が下落トレンドへ反転することを示唆する「ダブルトップ」パターンが示現する。
メキシコペソ円が下落した局面では、7月10日の週の安値8.141円でサポートされるかに注目。下方ブレイクすると、メキシコペソ円の上昇トレンド終了が明確になり、下落トレンドへ転換した可能性が高まる。
MXNJPY週足チャート
![A graph of stock market Description automatically generated](https://a.c-dn.net/b/0eajK7/image2.png)
資料:Trading View
トルコリラ円(TRYJPY)の見通し
トルコリラ円は9期間指数移動平均線がレジスタンスとして機能し、上値が重い展開が続いている。トルコ中銀は10月の金融政策決定会合でも利上げを実施したものの、依然としてインフレ率(10月前年比61%)と比べて低い政策金利の水準(35%)にとどまっている。
エルカン総裁が就任して以降、インフレ抑制のために利上げを実施していることは、トルコ中銀の信用回復のために重要である。
現状は段階的な利上げにとどまっていることから、心理的節目である5.50円を超えてトルコリラ円が上昇する可能性は低い。しかしながら、トルコ中銀が今後も利上げを実施していき、トルコ中銀の信用回復が進むにつれて、トルコリラ円が上昇する可能性がある。トルコ中銀の動向がトルコリラの鍵を握っている状況は継続しよう。
下向きの9期間指数移動平均線がレジスタンスとして機能し、トルコ中銀が短期的に大幅な利上げを実施する可能性が低い中、トルコリラ円の更なる下落を見込む。トルコリラ円は、7月17日の安値5.024円へ下落する可能性がある。
TRYJPY週足チャート
![A graph of a stock market Description automatically generated](https://a.c-dn.net/b/2QM1J2/image3.png)
資料:Trading View
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南アフリカランド円(ZARJPY)の見通し
南アランド円は、週足チャートで、レジスタンスであった8.085円を上方ブレイクした。MACDラインがシグナルラインを上回り、またRSIは50を超えており、ZARJPYに強気シグナル(ZAR高JPY安)が点灯している。
テクニカル面の強気シグナルに加え、南ア中銀は一部の利下げに転じている新興国中銀と異なり、高い政策金利を維持することを示唆していることは、南アランド円をサポートしよう。
ZARJPYは、2022年6月6日の週から2023年5月8日の週にかけての南アランド円の動きに基づいたフィボナッチリトレースメント78.6%水準8.405レベルへの上昇を見込む。上方ブレイクに成功した場合、ZARJPYは、2022年6月6日の週の高値8.812円への上昇が視野に入る。
ZARJPY週足チャート
![A graph of stock market Description automatically generated](https://a.c-dn.net/b/1uVInv/image4.png)
資料:Trading View
ポーランドズロチ円(PLNJPY)の見通し
総選挙の結果を受け、ポーランドズロチ円が上昇しており、8月7日の週の高値35.938円を終値ベースで上方ブレイクした。RSIやMACDにて「弱気の乖離(ダイバージェンス)」が示現していることは気掛かりであるものの、9,20,50、200日指数移動平均線が上向きかつ、上から順に並ぶポーランドズロチに強気の「パーフェクトオーダー」が成立している。
加えて、野党が連立政権を樹立する可能性が一段と高まった場合、ポーランドに対する投資家センチメントが一段と改善することが見込まれ、PLNJPYの一段高を見込む。、2月から7月にかけてのEURPLNの値動きに基づいたフィボナッチエクステンション61.8%水準37.54円への上昇が視野に入る。
PLNJPY週足チャート
![A graph of stock market Description automatically generated](https://a.c-dn.net/b/2Ke7f0/image5.png)
資料:Trading View。
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-- DailyFX.com ストラテジスト 木全哲也著